小笠原へは、月島埠頭から出航している貨物船の共勝丸で渡った。出航直後に「海が荒れてるから、今夜は東京湾に停泊する」と、いきなり足止めされたスローな楽しい船で、67時間後にようやく小笠原へ上陸できた。
小笠原が自然の宝庫であり、地球の息吹を感じられる島だと知っていたが、まさに楽園だった。父島でも、母島でも、とくに何かをしたわけではないけれど、そこにいるだけで心は満たされた。島をぶらぶら歩き、空気を胸一杯に吸い込むと幸せな気持ちになれる。小笠原の空気には「焦らなくていいから。急がなくていいから」というメッセージが含まれているように感じられた。
また、都会では人々が顔を背けて暮らしているが、小笠原は違う。絆を大切にして人々が向き合って暮らしている。昭和30年代を舞台にした映画がヒットしているけれど、あの心温まる世界が小笠原には残っていると思う。だからこそ、旅人を惹きつけるのだろう。僕は母島に滞在中、毎回海に飛び込んで島を去る旅人を見送った。年齢に関係なく(そのとき43歳だった)子供の心に戻れる島は、小笠原以外になかった。
今年は小笠原諸島返還40周年にあたるという。じつにめでたいし、ありがたいと思う。なぜならば40周年を祝うという口実で、再び小笠原に足を運べるではないか。
ちなみに前回はおがさわら丸を利用して帰ったが、今度は月島埠頭到着の共勝丸で帰ってみたい。母の島や父の島を離れて月の島へ帰るなんて、かぐや姫みたいだから。 |
| シェルパ斎藤 |
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